2015年5月31日日曜日

進化したDaS、もしくはセキュアジェスチャーテクノロジー

ロッキード・マーチンというと「あの」ロッキード事件の会社という印象ですね。今は旅客機は作ってなくて軍事用に特化しているようです。で、IT関連技術部門があって、そこが提供しているのがMandrake Secure Gesture Technologyだそうな。
Is swipe technology the future of authentication? -- GCN 
簡単に言うと、Draw-a-Secretの進化版。もうちょっと複雑化したもの。という感じですね。確かに精度を高めればセキュアにはなるかも知れませんが、そんなにうまくいくだろうか。

ロッキード・マーチンと組んでいたのはFixmoという会社のようですが、ライバル会社のGood Technology社に裁判で争った挙句に買収されてしまったようです。Fixmo社の各種Web記事に張られていたリンクはすべてjp.good.comへランディングする模様。これだとMandrakeの内容もよく分かりません。「Secure Gesture」がFixmo社の商標のようなので、主導権を握っていたのはFixmoだったのではないでしょうか。買収された経緯が経緯だけに技術としてどういう扱いを受けるかは…。

いずれにしても強化したDaSくらいでそんなに騒がないでほしいかな…アメリカは政府がセキュリティ強化のためにいろいろな施策を打っているようで、この記事も政府に売り込んだことで注目されたような話に聞こえます。 ロッキードが軍需産業で政府に近い関係だからという要素も考えなくてはならないのでしょうね、こういう場合。

2015年5月9日土曜日

TouchIDは誰があるいはどの指紋が認証を通ったかを教えてくれない

Appleの得意とする「使いやすさ」の裏にある危うさ、でしょうか。
Apple Touch ID design constraint raises authentication red flags - TechRepublic 
Touch IDは、いくつかの指紋を登録することができます。その際、その指紋が所有者本人のものであるかどうかをチェックすることはありません。

通常、シリアスなセキュリティにおける指紋認証では、指紋を登録するときに何らかの手段で(たとえば立会人がいて)本人が指紋を読ませていることを確認します。誰かの認証のための指紋として別人の指紋が登録されるという事態は基本的には防止措置が取られているはずです。そうでなければ何を認証しているかが分からなくなりますからね。

別人の指紋で認証できるようにしてしまうというのは例えて言えばICカードの入構証で扉を通過できる人間をコントロールしているときに、コピーカードを作成して他人に渡して使わせているようなものです。

もちろん、それでもその指紋が完全に信頼できる、かつ、どんな秘密も共有できる間柄の人間のものであれば問題はないのでしょう。そういう存在って何?自分の分身ですか?配偶者?いやいや、配偶者と言えども共有できない情報はあるでしょう。(そのことの良し悪しはさておき。)

実はもっと悪いことに、iOSの仕組み上、指紋は暗証番号さえ知っていれば登録できてしまうらしいです。なので、本当に他人であっても登録できてしまいます。そしてそれを本人に告げる必要はありませんし、本人に通知されることもありません。セキュリティは暗証番号のところで担保されているはずだから。

これは要するに、指紋認証のセキュリティ強度は数字4桁の暗証番号のそれと等しいということです。

そうやって本人の与り知らぬところで登録された指紋であっても、登録を通ってしまえばその指紋はその後事実上あらゆる情報へのアクセスに使えてしまいます。もちろんお金が絡むような処理もできてしまいます。その種の「こっそり登録された指紋」で何かが行われても本人に通知は行きません。理論上、その処理は本人が行ったものであるはずだとされているからです。

また仕組み上、登録された指紋の間には区別がないそうです。アプリの側から見て、どの指紋で認証されたのか、という区別はできなくなっています。たとえば、右手の人差指で認証した場合にはAという動作をさせ、左手の親指で認証した場合にはBという動作をさせる、といった区別はできないわけです。

アプリは指紋認証が通ったという事実のみを用いて、それを全面的に信用して処理を進めるかどうか、という選択を強いられてしまいます。しかしこれは、仕組みがそうなっているのでアプリとしてはそうするしかありません。というかそれが問題だと思っている人が開発者にせよ利用者にせよほとんどいないというのが現状ではないでしょうか。

これ、意外と意識していない人が多そうですね。ちょっと薄ら寒くなってきました…。

iPhoneがTouch IDを搭載する前からスマートフォンに指紋センサが搭載された例はありました。しかし事実上iPhoneのTouch IDが「メインストリームで利用されている指紋センサ」であることはほぼ間違いないでしょう。そのセキュリティがこんな状況であるということはかなり問題であると思われます。

Appleは「Touch IDが気軽に使われる状況」がセキュリティを強化するために必要だと考えていると思います。高いセキュリティとユーザビリティを両立させる道具立てとしてある時点から以降の機種全てのホームボタンに指紋センサを組み込み、日常的に使ってもらい慣れてもらうために画面アンロックと指紋認証を一体化させるという方策を行いました。OSごとサポートして利便性を高める工夫をしています。しかしそこにはある種の限界があります。これがこのままの仕様で進むのであれば相当の問題に発展する可能性もあると思います。

今のところあまり話題になっていないのが気がかりです。

2015年5月2日土曜日

そのメガネは常時相手を分析しているわけだが

画像認識系の話題を二つ
Microsoft glasses will tell you how people FEEL: Patent reveals 'emo specs' that use sensors and cameras to read emotions of those around you
被写体の年齢を測定する「How Old Do I Look?」サービスを川崎関連の選手に使ったら精度がイマイチだった
この二つ、画像認識で被写体を解析するという性格の技術の話で、どちらもMicrosoftということで一緒に記事にしてみました。多分近い部門でやっているのだと思います。

が、後者を読むとわかりますが、精度が高そうには見えません。前者にしても、まあまだ明細書読んでないので分かりませんが、人間の顔の表情から感情を読み取るのとか、姿勢から退屈しているかどうかを判定するとか、まあできそうだと言えばそうですが、何かちょっと論理的な裏付けはどうなってるのかなー的な感じです。そう簡単には実用化しないだろうと思うのはGlassに組み込んだチップで計算できなさそうな気がするから。もちろんクラウドで処理するというのはありうるんでしょうけど。

ただ画像認識の精度はどんどん向上しているのだろうとは思います。思っても見ないことが簡単にできるようになっていったりするのでしょうかね。